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千言万句

  • 2019年7月18日

井伏鱒二『遙拝隊長』(1950)

「ばか野郎。敵前だぞォ、伏せえ」  元陸軍中尉の岡崎悠一は、通りすがりの人々に誰彼と見境なく、突然、怒鳴りつけ、戦時中さながらの号令を発している。彼は、戦争がいまだに続いていると錯覚している。。。  この作品は、昭和25年(1950)、戦争の記憶もまだ生々しい頃に書かれている。負傷して帰還し、戦後、 […]

  • 2019年5月21日

井伏鱒二初期短編

 飄々として、軽妙な人物像。淡々として、起伏のない情景描写。 何が面白いのか、と言われれば、説明に困るような作品。。。それが井伏鱒二の短編に感じることだ。 しかし、文章は平易かつ的確で、目の前にありありと情景が浮かんでくる。この描写の巧みさが、この作家の魅力なのだろう。  井伏鱒二は、早稲田文学部に […]

  • 2019年5月20日

井伏鱒二『山椒魚』(1929)

度重なる改稿  初出は『幽閉』という題で、1923年(大正12年)に早稲田の同人誌に発表されたもの。その後、大幅に改稿されて、1929年(昭和4年)、『山椒魚』という題で再発表された。  現在、一般的に読まれているものは、この昭和4年発表時のもののようだが、この作品は、その後、度々著者によって改筆が […]

  • 2019年2月7日

カフカ『アメリカ』(1927)

『アメリカ』という題名  この作品は、カフカの親友マックス・ブロートによってカフカの遺稿が編纂され、1927年に『アメリカ』という題で出版された。 現在では、『失踪者』という題で出版されているが、どうも自分には、この『アメリカ』という当初の題に愛着がある。  残された手記から、カフカがこの小説を『失 […]

  • 2019年2月5日

カフカ『審判』(1925)

「日常」という目に見えない負担  Kにとって訴訟とは何だったのか。 この訴訟には、終わりも見えなければ、進展も見えない。それでいて、生きている以上、ずっとつきまとって離れないものだ。ただ重い負担となって、ずっとKにのしかかっている。  Kの生活は、訴訟を中心にして回っている。すでに「日常」の一部とな […]

  • 2019年1月18日

カフカ短編小説 その2

『皇帝の使者』  死の床にある皇帝が、一介の市民に過ぎないあなた(Du)に宛てて伝言を送る。だが、その伝言を預かった使者は、懸命に駆け続けているにもかかわらず、決してあなたにたどり着くことはない。何千年もの間。。。 それでもあなたは、皇帝の伝言(Botschaft)を待ち続けている。  例によって、 […]

  • 2019年1月18日

カフカ短編小説

 カフカは、未発表や未完成作品を含めて、数多くの短編を残した。カフカの短編小説の多くは、寓話(parable)と呼ぶべきものであって、話の筋や流れ自体にほとんど意味がない。そのため、その話が何を物語っているのか、いろいろと解釈する必要がある。  実存主義、ユダヤ教、20世紀初頭のプラハ、病と孤独、複 […]

  • 2018年1月15日

水村美苗『日本語が亡びるとき』(2008)

消えていく言語  一説では、現在世界に5000から8000の言語が存在しているといわれる。数え方にもよるが、少なくとも3000近くあると見るのが一般的らしい。 世界には多種多様な言語が存在しているが、それと同時に消滅の危機に瀕している言語も数多く存在している。その数はユネスコの発表によれば、2009 […]

  • 2016年8月22日

ホラティウス『詩論』(B.C. 1c)

 ミネルウァの意に添わないなら、あなたは語ることもつくることもいっさいできないだろう。これこそあなたの判断であり、良識である。けれども、将来あなたが何かを書いたなら、まずそれを批評家のマエキウスと父上と私に読んで聞かせてから、原稿を家の奥深くしまい、九年目まで待つこと。まだ発表していないものは破り捨 […]

  • 2016年1月10日

斎藤兆史『英語達人塾』(2003)

 巷に溢れる大量の安易な英語学習本に背を向け、本気で英語を習得しようという人に向けた本。  本書が目指すところは、ひじょーに次元が高い。  「Native English speakers並みを目指す!」  。。。というのではない。 Native speaker以上を目指す!というのだ。生半可な気持 […]