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  • 2020年9月9日

ヴォルテール『寛容論』(1763)

ユグノー戦争 – 血に塗られた宗教戦争  フランスは16世紀後半に、国内のカトリックとプロテスタントが血で血を洗う宗教戦争を経験している。ユグノー戦争といわれたこの惨劇は、1562年から1598年のナントの勅令によってプロテスタントの信仰の自由が認められるまで、40年近く続いた。 ナント […]

  • 2020年8月17日

プラトンの偽書『アルキビアデス』について

偽書と疑われた作品  プラトンの作品として現代まで伝わっているものは、帝政ローマ期にトラシュロスがまとめた36編が基本となっている。『アルキビアデス』はその中に含まれる作品だが、古代、中世、近代を通じてプラトンの真作として、その真偽が疑われることはなかった。 だが、『クレイトポン』と同じく、19世紀 […]

  • 2020年8月16日

プラトンの偽書『クレイトポン』について

 古代ローマ帝国2代皇帝ティベリウスの廷臣であったトラシュロスのまとめたプラトン全集は、現代に至るまでプラトンの著作を編集する際の基礎となってきた。 帝政ローマ期には、すでに真偽不明なプラトン名義の著作が相当数出回っており、プラトンの真作と思われる作品をトラシュロスは整理し、編纂した。トラシュロスが […]

  • 2020年1月25日

井伏鱒二 短編作品 その3

『おんなごころ』  太宰が私に対して旧知の煩わしさを覚えていたことを私も知っていた。敗戦後の太宰は、外見だけのことであるが、まるきり人違いがしているようであった。私だけでなく、以前からの親しい友人たちにも、たいていの旧知の煩わしさを感じているようだった。  太宰治とは旧知の仲であり、師弟関係でもあっ […]

  • 2019年9月16日

川端康成『散りぬるを』(1934)

 初出は、1933(昭和8年)年。  5年前に殺された二人の若い女性――― ある作家が、二人への感傷的な思い出を交えながら、事件の訴訟記録をもとに、犯人の心理を推察していく、という話。残された記録から犯人の精神状態と犯行の動機を探っていく。 しかし、それは多分に作家の想像力を交えたもので、決して科学 […]

  • 2019年9月15日

川端康成『片腕』(1964)

 ふと私には、この片腕とその母体の娘とは無限の遠さにあるかのように感じられた。この片腕は遠い母体のところまで、はたして帰りつけるのだろうか。私はこの片腕を遠い娘のところまで、はたして返しに行き着けるのだろうか。  ある若い女から片腕を借りてくる物語。  片腕を借りてくるという奇妙な主題は、何かの象徴 […]

  • 2019年9月14日

川端康成『眠れる美女』(1961)

 三島由紀夫は、新潮文庫版に解説を寄せて、この作品を次のように評している。  『眠れる美女』は、形式的完成美を保ちつつ、熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の逸品である。デカダン気取りの大正文学など遠く及ばぬ真の頽廃がこの作品には横溢している。  この作品は、これ以上ない閉塞状態をしつ […]

  • 2019年9月2日

川端康成 短編作品

『イタリアの歌』  1936年の初出。 川端の代表作『抒情歌』(1932)と同じく「死とそれを受け入れるもの」という主題を引き継いだ作品。だが、この作品の「死」の方がより唐突だ。死を受け入れる側は、突然のことに茫然とし、感情さえ失っているように見える。  不慮の火災事故を引き起こした戦争医学博士の鳥 […]

  • 2019年9月1日

川端康成『花のワルツ』(1937)

 チャイコフスキーのバレエ曲「花のワルツ」を舞台で踊る二人のバレリーナ、鈴子と星江。 二人は舞台の主役であり、振り付けも二人のために考えられたものだ。若い二人はまだ未熟で、互いを認め信頼しつつも、感情の起伏に流されて、舞台袖で言い争いになってしまう。 ここで二人の対照的な性格の違いがはっきりと描かれ […]

  • 2019年6月5日

井伏鱒二『駅前旅館』(1957)

 昭和30年前後の東京、上野。 上野駅前の旅館が舞台。  当時は駅前に呼び込みをしている旅館というのがたくさんあったらしい。当然だが、この時代は、旅先の宿を予約するというのがままならなかった。そこで重要になってくるのが番頭の役割で、同業者同士で客を斡旋する。同業者から客入りの連絡を受けた番頭は、駅ま […]