• 2021年2月1日

言語の遺伝子は存在するの? – スティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能』(1994)

スティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能』(1994) 言語は本能か?  言語は、社会的な産物だ。子供は、適切な社会関係の中で、言語に触れなければ言葉を話せるようにはならない。その意味で、言語は後天的に獲得する社会的技術だ。 そして、どのような言語を習得するか、ということもその子供の育つ家庭や社会 […]

  • 2020年10月4日

ジョン・ロック『知性の正しい導き方』(1706)

知性が陥る欠陥 – 何が理性の働きを阻害するのか?  イギリス経験論の祖、ジョン・ロックが一般読者向けに執筆した作品。 1697年から執筆されたようだが、生前には出版されることがなく、1706年に出された遺稿集の中に収められた。そのため、推敲を経ない未完の作品となっている。 1741年に […]

  • 2020年9月9日

ヴォルテール『寛容論』(1763)

ユグノー戦争 – 血に塗られた宗教戦争  フランスは、16世紀後半に国内のカトリックとプロテスタントが血で血を洗う宗教戦争を経験している。この惨劇は、ユグノー戦争と呼ばれた。ユグノーとは、フランス国内におけるプロテスタントへの蔑称だ。1562年に始まり、1598年のナントの勅令によってプ […]

  • 2020年8月19日

プラトン『リュシス』(B.C. 4c)

紐帯の原理としての友愛(philia)  副題は、「友愛について」。 ここで論じられている友愛(philia ピリア)は、現代の友情(friendship)より遥かに広い概念だ。 古代ギリシアにおける「友愛」は、感情的な結びつきを表すものではなく、人と人との間を結びつける紐帯となる概念で、そこからさ […]

  • 2020年8月18日

プラトンの偽書『恋がたき』について

 『恋がたき』または『恋人たち』。 副題は、「哲学について」。トラシュロスのまとめた36篇の中のひとつだが、この1篇もまた、プラトンの偽作として疑われている。  現代の計量文献学による研究では、この作品は、紀元前4世紀後半頃に書かれたもので、統計的には、クセノフォンの作品の方に有意な類似性が認められ […]

  • 2020年8月17日

プラトンの偽書『アルキビアデス』について

偽書と疑われた作品  プラトンの作品として現代まで伝わっているものは、帝政ローマ期にトラシュロスがまとめた36編が基本となっている。『アルキビアデス』はその中に含まれる作品だが、古代、中世、近代を通じてプラトンの真作として、その真偽が疑われることはなかった。 だが、『クレイトポン』と同じく、19世紀 […]

  • 2020年8月16日

プラトンの偽書『クレイトポン』について

 古代ローマ帝国2代皇帝ティベリウスの廷臣であったトラシュロスのまとめたプラトン全集は、現代に至るまでプラトンの著作を編集する際の基礎となってきた。 帝政ローマ期には、すでに真偽不明なプラトン名義の著作が相当数出回っており、プラトンの真作と思われる作品をトラシュロスは整理し、編纂した。トラシュロスが […]

  • 2020年1月25日

井伏鱒二 短編作品 その3

『おんなごころ』  太宰が私に対して旧知の煩わしさを覚えていたことを私も知っていた。敗戦後の太宰は、外見だけのことであるが、まるきり人違いがしているようであった。私だけでなく、以前からの親しい友人たちにも、たいていの旧知の煩わしさを感じているようだった。  太宰治とは旧知の仲であり、師弟関係でもあっ […]

  • 2019年9月16日

川端康成『散りぬるを』(1934)

 初出は、1933(昭和8年)年。  5年前に殺された二人の若い女性――― ある作家が、二人への感傷的な思い出を交えながら、事件の訴訟記録をもとに、犯人の心理を推察していく、という話。残された記録から犯人の精神状態と犯行の動機を探っていく。 しかし、それは多分に作家の想像力を交えたもので、決して科学 […]

  • 2019年9月15日

川端康成『片腕』(1964)

 ふと私には、この片腕とその母体の娘とは無限の遠さにあるかのように感じられた。この片腕は遠い母体のところまで、はたして帰りつけるのだろうか。私はこの片腕を遠い娘のところまで、はたして返しに行き着けるのだろうか。  ある若い女から片腕を借りてくる物語。  片腕を借りてくるという奇妙な主題は、何かの象徴 […]