Sonny Landreth – Levee Town (2000)
『Levee Town』とは、堤防の町という意味。もちろん、ニューオーリンズのことだ。
前作『South of I-10』は、彼のルーツであるルイジアナを主題とした、サザンテイストのロック作品だった。あくまでロック色が強く、南部の香りをまとう内容であった。
そして今回は、まさに“ルーツ・ミュージック”といった趣の作品である。ニューオーリンズの多様な音楽的要素を、幅広く取り込んだアルバムだ。
ニューオーリンズのルーツ・ミュージックといえば、ザディコ(zydeco)やケイジャン(cajun)が代表的だろう。どちらもフランス音楽に由来するカントリーミュージックであり、アコーディオンの使用が非常に印象的なジャンルである。サニー・ランドレスは、これまでそうしたフレンチ・ルイジアナの要素を、どちらかといえば実験的な形で取り入れてきた。だが今回は、それがアルバム全体のテーマとなっている。
特に印象的なのは、「The U.S.S. Zydecoldsmobile」。アコーディオンを主役に据えたロックで、「ザディコをロックにしたら、きっとこうなるだろう」と感じさせる一曲だ。
「Angeline」と「Deep South」は、サニー・ランドレスには珍しいホーン・アレンジの楽曲。ルイジアナにはもう一つ、ブラスバンドによるマーチ「セカンド・ライン」と呼ばれる代表的な地域音楽があるが、これらはその要素を反映しているのだろう。
カントリー・バラードの「Love and Glory」も、個人的に非常に好きな一曲。ちなみにこの曲の歌詞は、ルイジアナに伝わる古い伝承をモチーフにしているらしい。
やはりルーツ・ミュージックの醍醐味は、多様な音楽的要素をミックスアップ(mash up)するところにある。無理に組み合わせて印象の悪くなる作品も多い中で、サニー・ランドレスの『Levee Town』は、間違いなく「ルーツ・ミュージック」の傑作と呼べるだろう。
なお、本作は2000年にリリースされたが、2009年には未発表曲5曲を追加したExpanded Editionが発売されている。
The U.S.S. Zydecoldsmobile
Love and Glory
Z. Rider
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