Tony Furtado – Live Gypsy (2003)
「Roots Musicってどんなの?」と誰かに聞かれたら、迷わずこの1枚を手渡したい——Tony Furtadoの『Live Gypsy』(2003)は、そんな“ルーツ音楽の入口”として完璧なアルバムだ。
Banjoという楽器の“再定義”
Tony Furtadoはカリフォルニア州オークランド出身のバンジョー奏者。バンジョーといえば通常はカントリーやブルーグラスの象徴的な楽器だが、彼の演奏はその枠をはるかに越えている。カントリー、ブルーグラス、ジャズ、ブルース、フォークといったRoots Musicの要素を自在にマッシュアップし、さらにロックやファンクのアグレッシブなサウンドまで大胆に取り込んでしまう。まさにフュージョン・スタイルの旗手とも言える存在だ。
特に驚かされるのは、バンジョーという伝統的な弦楽器でファンクを演奏してしまうという離れ業。これは、従来のバンジョーに対する固定観念を根底から覆すような挑戦であり、同時に彼の技術と音楽的野心を物語っている。
Slide Guitaristとしてのもうひとつの顔
Furtadoはまた、スライド・ギタリストとしても卓越した腕前を誇る。切れ味鋭いピッキングとスピード感のあるフレーズは、スライド・ギターの魅力を現代的な感覚で再構築している。しかも、彼はクラシックなボトルネック奏法をあえて選び、そのサウンドに渋みと味わい深さを加えている。アルバムのジャケットにも写るそのスタイルは、まさに“今”のRoots Musicを象徴するヴィジュアルだ。
『Live Gypsy』
2003年に発表された本作『Live Gypsy』は、Furtadoの真骨頂ともいえるライブ盤。ジャンルを横断するそのプレイスタイルは、Roots Musicの多様性と自由さをそのまま音にしたかのようだ。ブルース・ロック、ファンク・ロック、フォーク、スウィング……あらゆるジャンルのエッセンスが凝縮されており、「Roots Musicってこういうものだ」と言えるほどに奥行きのある作品となっている。
まさにRoots Musicの縮図ともいえる内容であり、入門編としても、コアなリスナーの再発見用としても、一度は聴いておくべき名盤だ。
特に聴いてほしい2曲
Furtadoは、インストの名手でもある。このアルバムでも優れたinstrumentalの楽曲を聴かせている。特にオススメなのが次の2曲だ。
“The Ghost Of Blind Willie Johnson”
重厚なブルース・ロックの香りが漂う一曲。盲目の伝説的ブルースマン、ブラインド・ウィリー・ジョンソンへのオマージュとして秀逸な演奏を聴かせる。
“The Angry Monk”
ファンク・ロックの名曲。ファンクのグルーヴとスライド・ギターの挑発的なリズムが交錯したフュージョン・スタイルの楽曲。
最後に
正直、このアルバムがきっかけでRoots Musicの世界にどっぷりハマってしまった。何年聴いても飽きることがない。それほどの完成度と奥深さがある。メジャー作品ではないため、YouTubeなどで聴ける音源が限られているのが惜しいところだが、だからこそ、CDでじっくり向き合ってほしい一枚だ。
The Ghost Of Blind Willie Johnson
The Angry Monk
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