文学逍遥 手に届かないもの – 井伏鱒二『屋根の上のサワン』 井伏鱒二『屋根の上のサワン』(1929) わたしは足音を忍ばせながら傷ついたがんに近づいて、それを両手に拾いあげました。そこで、この一羽の渡り鳥の羽毛や体の温かみはわたしの両手に伝わり、この鳥の意外に重たい目方は、そのときのわたしの思い屈し... 2019.05.20 文学逍遥
文学逍遥 度重なる改稿を経た意味 – 井伏鱒二『山椒魚』 井伏鱒二『山椒魚』(1929)度重なる改稿 初出は『幽閉』という題で、1923年(大正12年)に早稲田の同人誌に発表されたもの。その後、大幅に改稿されて、1929年(昭和4年)、『山椒魚』という題で再発表された。 現在、一般的に読まれている... 2019.05.20 文学逍遥
文学逍遥 放浪と旅立ちの物語 – カフカ『アメリカ』(1927) カフカ『アメリカ』(1927)『アメリカ』という題名 この作品は、カフカの親友マックス・ブロートによってカフカの遺稿が編纂され、1927年に『アメリカ』という題で出版された。 残された手記から、カフカがこの小説を『失踪者』という題にしようと... 2019.02.07 文学逍遥
文学逍遥 「日常」という負担 – カフカ『審判』(1925) カフカ『審判』(1925)「日常」という目に見えない負担 Kにとって訴訟とは何だったのだろう? この訴訟には、終わりも見えなければ、進展も見えない。それでいて、生きている以上、ずっとつきまとって離れないものだ。ただ重い負担となって、ずっとK... 2019.02.05 文学逍遥
晴筆雨読 インド仏教小史 – ヤン・ゴンダ『インド思想史』~仏教理論編~ J・ゴンダ『インド思想史』のまとめ続き。今回は仏教について。ブッダの不可知論 ブッダは悟りを開いた当初、自らが達した解脱智を人々に説くことを躊躇していた。しかし、世俗化する祭式主義と出家などの苦行主義とに両極化する中で、人々が苦しみの中に置... 2018.08.21 晴筆雨読
晴筆雨読 ヴェーダからヒンドゥー教まで – ヤン・ゴンダ『インド思想史』(1948) インドの思想と宗教 インド北西のインダス川流域では、紀元前2600年頃からインダス文明が発展した。この文明は紀元前1800年頃には衰退し、それと入れ替わるような形で、紀元前1900年から1700年を境にヴェーダ期と呼ばれる新たな文化が形成さ... 2018.08.20 晴筆雨読
晴筆雨読 原始仏教入門 – 中村元『ブッダ伝 生涯と思想』(1995) 中村元『ブッダ伝 生涯と思想』(1995)ブッダ本来の教えを知る ガウタマ・シッダールタは、紀元前五世紀頃、インド北部、ネパール国境付近のシャーキャ国の王族として生まれ、29才で出家、6年間の修行ののちに悟りを開き、その後は80才で入滅する... 2018.08.15 晴筆雨読
哲学談戯 エロスへの賛歌 哲学的文学作品 – プラトン『饗宴』(385 BC?) 哲学的文学作品 彼女は言った。『では、以上をまとめると、こうなる――エロスは、よいものを永遠に自分のものにすることを求めているのだと』 舞台は、前416年のアテナイ。ソクラテスは53歳で、壮年を迎えている。 『ソクラテスの弁明』『クリトン』... 2017.03.11 哲学談戯
哲学談戯 魂という不滅不変の存在 文学と哲学の融合 – プラトン『パイドン』(385 BC?) プラトン『パイドン』(385 BC?)プラトン中期の代表作 『パイドン』は、毒杯を仰ぐソクラテスの最期の姿を描いた作品。哲学的のみならず、文学的にも優れた内容で、プラトン中期を代表する著作だ。 「魂の不死について」という副題が付いているよう... 2017.03.10 哲学談戯
哲学談戯 対話から想起へ – プラトン『メノン』(385 BC?) プラトン『メノン』(385 BC?)対話から想起へ 『メノン』は、プラトン初期対話篇の作品で、『ゴルギアス』とともに最も遅く書かれたと見られている。初期作と中期作の両方の特徴を持ち、中期への橋渡し的な位置付けにある。 主題となっていることは... 2017.03.06 哲学談戯