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文学逍遥

  • 2024年2月24日

女性への眼差しの変化 – 太宰治『満願』

太宰治『満願』(1938)  八月のおわり、私は美しいものを見た。朝、お医者の家の縁側で新聞を読んでいると、私の傍に横坐りに坐っていた奥さんが、 「ああ、うれしそうね」と小声でそっと囁(ささや)いた。 […]

  • 2019年9月16日

虚構と近代刑法 – 川端康成『散りぬるを』

川端康成『散りぬるを』(1933)  初出は、1933(昭和8年)年。  5年前に殺された二人の若い女性――― ある作家が、二人への感傷的な思い出を交えながら、事件の訴訟記録をもとに、犯人の心理を推察 […]

  • 2019年9月15日

こころの不具 – 川端康成『片腕』

川端康成『片腕』(1964)  ふと私には、この片腕とその母体の娘とは無限の遠さにあるかのように感じられた。この片腕は遠い母体のところまで、はたして帰りつけるのだろうか。私はこの片腕を遠い娘のところま […]

  • 2019年9月2日

情景に溶け込む心情 – 川端康成 短編作品

『イタリアの歌』  1936年の初出。 川端の代表作『抒情歌』(1932)と同じく「死とそれを受け入れるもの」という主題を引き継いだ作品。だが、この作品の「死」の方がより唐突だ。死を受け入れる側は、突 […]

  • 2019年9月1日

恋と芸術の狭間 – 川端康成『花のワルツ』

川端康成『花のワルツ』(1937)  チャイコフスキーのバレエ曲「花のワルツ」を舞台で踊る二人のバレリーナ、鈴子と星江。 二人は舞台の主役であり、振り付けも二人のために考えられたものだ。若い二人はまだ […]