フランス語とブルースが融合したルイジアナの音楽
― Clifton ChenierとZydeco
Clifton Chenier (June 25, 1925 – December 12, 1987), a Louisiana French-speaking native of Opelousas, Louisiana, was an eminent performer and recording artist of Zydeco, which arose from Cajun and Creole music, with R&B, jazz, and blues influences. He played the accordion and won a Grammy Award in 1983.
He was known as the ‘King of Zydeco’, and also billed as the ‘King of the South’.
フランス語と英語がごちゃ混ぜになった歌詞、アコーディオンの独特な音色、そしてブルース。
クリフトン・シェニエ(Clifton Chenier)を初めて聴いたときのことは正確には覚えていないけれど、「これこそルイジアナの音楽だ!」と直感した感覚は、今でも鮮明に残っている。
ルイジアナといえば、ジャズ発祥の地ニューオリンズがある地だ。かつてフランス領だった地域で、現在もフランス文化の影響が色濃く残っている。
だからこそ、クリフトン・シェニエの音楽に触れたとき、「ブルースからジャズやR&Bへとつながっていく音楽史の“Missing Link(失われた環)”を見つけたのでは?」という感覚を覚えた。もちろん、歴史的に本当にそうした流れだったわけではないのかもしれない。けれど、それほどに彼の音楽は、ルイジアナ独自の音楽文化を強く感じさせるものだった。
クリフトン・シェニエの音楽の土台となっているのは、ザディコ(Zydeco)というジャンルだ。ザディコは、ルイジアナの地元の祭りや集会などで演奏されていた郷土音楽で、フランス由来のワルツやツーステップを基礎とし、主にダンス音楽として発展した。フランス語(しかも黒人訛りの)で歌い、アコーディオンで演奏するというスタイルが特徴で、このアコーディオンの音色が実に“フランス的”で印象的だ。
このローカルな音楽に過ぎなかったザディコを、全米へ、さらには世界へと広めるきっかけを作ったのが、他でもないクリフトン・シェニエである。
彼は当初、モダン・ブルース志向の音楽家だったようで、ザディコにジャズやブルースの要素を積極的に取り入れていった。ピアノ、エレキギター、ベース、ドラムといったモダンな楽器をザディコに持ち込んだ最初の人物のひとりであり、結果としてザディコの様式そのものを大きく変革することになった。現在では「Modern Zydecoの第一人者」と称されている。
一応、クリフトン・シェニエのアルバムは「ブルース」に分類されることが多いようだが、実際に聴いてみると、一般的なブルースのイメージとはかなり異なる。そもそも“ブルース”というジャンル自体が非常に幅広く、その一角にザディコが位置づけられている、というべきかもしれない。
ザディコ自体がもともと非常に独特な音楽であることも、その印象に影響しているだろう。今あらためてChenierの演奏を聴くと、ワルツ的な要素が色濃く残っていて、ダンス音楽としてのルーツを強く感じさせる。
貴重な映像がYouTubeに上がっていて、それを観ながらあらためて思ったが、ジャズやブルースというとアメリカの“黒人音楽”として語られることが多いが、実はそこにフランス音楽の影響が思いのほか深く入り込んでいたのかもしれない。
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