作品概要
『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』(Wilhelm Meisters Lehrjahre、1795–96)は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテによる長編小説であり、近代ドイツ文学において「教養小説(ビルドゥングスロマン)」の原型とされる作品である。
主人公ヴィルヘルムは裕福な商人の家に生まれ、演劇に魅了されて舞台の世界に身を投じるが、次第に「芸術と現実のはざま」で自己の生き方を模索していく。旅や人々との出会いを通して、彼は自己の欲望と理想の調和を求め、やがて社会の一員としての自己の使命を発見していく。
物語には様々な象徴的な人物が登場する。俳優一座の人々、神秘的な「塔の結社」、恋愛の対象となる女性たちなどは、ヴィルヘルムの成長を照射する鏡として機能する。特に「修行(Lehrjahre)」という概念は、青年が自らの夢や幻想を試し、挫折しながらも社会の中で成熟した人格へと育っていく過程を示している。
この小説は、ゲーテの文学観・人生観を色濃く反映している。演劇への傾倒はゲーテ自身の若き日の情熱を写し取り、また「個人の自由な発展」と「社会との調和」というテーマは、啓蒙主義からロマン主義へ移行する時代の精神的課題を象徴している。
登場人物一覧
*ネタバレなし版
ヴィルヘルム
主人公。父は富裕な商人で投資家。
マリアーネ
女優。ヴィルヘルムの恋人。
バルバラ
マリアーネに仕える女中。
ノルベルク
マリアーネへの求婚者。
ヴェルナー
商人。ヴィルヘルムの友人で将来の妹婿。
メリーナ
俳優。ヴィルヘルムの資金で劇団を立ち上げる。
メリーナ夫人
女優。メリーナと駆け落ちし捕まったが、ヴィルヘルムの口添えでメリーナとの結婚を正式に許される。
フィリーネ
女優。ヴィルヘルムの商用旅行の途上で知り合う。ヴィルヘルムとともにメリーナの劇団に加わる。
ラエステル
俳優。フィリーネととも旅をしていた旅一座の元団員。
ミニヨン
軽業師の一座で働かされていた孤児。12歳の女の子。ヴィルヘルムに引き取られる。
竪琴弾き
ヴィルヘルム一行と飲み屋で偶然に知遇を得て、その後ヴィルヘルムと旅を共にする。
伯爵
遠征途上の侯爵を歓待するために、メリーナの一座を自分の館に招く。
伯爵夫人
ヴィルヘルムに好意を抱く。
男爵
伯爵の親類。ドイツ演劇の愛好者。
ヤルノ
侯爵に仕える募兵官。
侯爵
一国の領主。軍隊を率いて遠征途上、伯爵の招きに応じて彼の館に逗留する。
フリードリヒ
フィリーネに仕えている少年。
女騎士(アマツォーネ)
美しい貴婦人。盗賊に襲われ負傷したヴィルヘルムを助ける。伯爵夫人と面影が似ている。ヴィルヘルムのあこがれ。
ゼルロ
劇団の座長。ヴィルヘルムの知己。
アウレーリエ
ゼルロの妹。フェーリクスという子を自分の手元で育てている。
フェーリクス
アウレーリエの下で育てられている3歳の男の子。
ロターリオ
男爵。愛称ロータル。
リューディエ
ロターリオの恋人。
テレーゼ
ロターリオのかつての婚約者。
ナターリエ
ロターリオの妹。
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