South of I-10 (1995)
Sonny Landrethの1995年作『South of I-10』は、そのタイトルが示す通り、アメリカ南部——とりわけ彼の故郷ルイジアナ——の風土と文化を深く反映した作品だ。
全体として、bluesやcajunの要素を感じさせつつも、サウンドの核にあるのはあくまでロック。ミドルテンポを基調にしたサザン・ロック調の楽曲群は、湿度を帯びた空気感と泥臭さを感じさせつつ、それを抑えた洗練さが同居している。南部音楽の土壌を感じながらも、決して古くさくならないところが、Landrethのセンスの光るところだ。
特筆すべきは、Mark Knopfler(Dire Straits)の参加だろう。独自のスライド奏法で知られるLandrethと、指弾きスタイルのKnopflerが交わることで、アルバム全体に深みと立体感が生まれている。
『South of I-10』は、ルイジアナという土地を音楽で描いた一種の地図のようでもある。伝統に根ざしながらも、しっかりとロックとして成立している──そのバランスが実に見事だ。Sonny Landrethというアーティストの「原風景」を知るうえで、聴き逃せない一枚。
Levee Town (2000)
“Levee Town”──それは堤防の町、すなわちニューオーリンズを象徴する言葉だ。Sonny Landrethの2000年作『Levee Town』は、その名にふさわしく、ルイジアナの音楽的多様性を見事に詰め込んだルーツ・ミュージックの傑作である。
前作『South of I-10』がロック色の強い南部サウンドだったのに対し、今回はニューオーリンズの文化的土壌に深く根差した作品。ザディコ、ケイジャン、セカンド・ラインといった地域音楽のエッセンスを、Landreth独自のフィルターを通して取り込んでいる。
特に印象的なのが、「The U.S.S. Zydecoldsmobile」。アコーディオンをフィーチャーしたこの楽曲は、ザディコとロックが融合したような一曲で、思わず体が動き出すグルーヴが魅力だ。
「Angeline」と「Deep South」は、ホーン・セクションが印象的なナンバー。ニューオーリンズのブラスバンド文化、いわゆる“セカンド・ライン”の息吹が感じられる。
また、「Love and Glory」はルイジアナの古い伝承をもとにしたバラード。しっとりとした語り口に、Landrethの表現者としての奥行きを感じさせる一曲だ。
本作は、さまざまなルーツ音楽を単なる装飾としてではなく、真に血肉化して描いた点で特筆に値する。雑多でありながら雑にならない──そのバランス感覚こそが、Sonny Landrethの真骨頂といえるだろう。
なお、2009年には未発表曲を5曲追加したExpanded Editionもリリースされており、より広がりをもった作品として再評価されている。
『Levee Town』は、ルイジアナという土地の記憶と音が交差する、音楽の交差点だ。南部の音に魅了されるすべての人に聴いてほしい。
The U.S.S. Zydecoldsmobile
Love and Glory
Z. Rider
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