From the Reach (2008)
ハリケーンカトリーナからの復興を願って

2008年、Sonny Landrethは自身のレーベルを立ち上げ、その第一弾としてリリースしたのがこのアルバム『From the Reach』だ。初の自主制作作品ということもあり、彼に縁の深い豪華なゲスト陣が顔を揃えている。Eric Clapton、Mark Knopfler、Dr. John、Robben Ford、Vince Gill、Eric Johnson、Jimmy Buffett──どの名前を取っても音楽ファンなら思わず身を乗り出すだろう。
アルバム全体はミドルテンポのロックが中心。Landrethのルーツであるbluesやcajun色はやや抑えめだが、楽曲ごとのサウンドの多様性や完成度は非常に高い。
注目すべきは、本作の背景にあるハリケーン・カトリーナの影響だ。2005年にルイジアナ州を襲った未曾有の自然災害と、その後の混乱。Landrethにとって地元の傷跡は深く、その痛みと再生への祈りが多くの楽曲に込められている。
オープニングを飾る”Blue Tarp Blues”は、その象徴ともいえる一曲だ。タイトルの「blue tarp」とは、被災地で仮設の屋根や覆いに使われるブルーシートのこと。破壊された街の風景がまざまざと浮かぶような、タフで切実なロックナンバーだ。
『From the Reach』は、単なるコラボレーション・アルバムではない。地元への想いと復興への祈りが重なった、Sonny Landrethにとって特別な意味を持つ一枚だろう。社会的メッセージを内包しながらも、音楽としての完成度もきわめて高い。静かに、しかし力強く心に残るアルバムである。
Blue Tarp Blues
Überesso
Bound By The Blues (2015)
原点回帰のBlues Album
2003年の名盤『The Road We’re On』を最後に、Sonny Landrethはしばらくbluesから距離を置いたキャリアを歩んできた。実験的な試みやメジャー志向の作品もあったが、どこか「彼らしさ」から離れていた印象が否めなかった。ファンとしては、いつかまたあの研ぎ澄まされたbluesに戻ってきてくれる日を、心待ちにしていた人も多いだろう。
そして、2015年にリリースされたこのアルバム『Bound By The Blues』こそ、その“原点回帰”が見事に結実した作品だ。
編成は、drums、bass、guitarというシンプルな3ピース構成。ゲスト・ミュージシャンも招かず、余計な装飾を排したタイトなサウンドは、逆にLandrethのスライド・ギターのみを際立たせている。ブルース・ロックというより、純然たるbluesへとぐっと歩み寄った印象で、その潔さが何よりも心地よい。
さらに本作では、Robert Johnsonの「Walking Blues」やSkip Jamesの「Cherry Ball Blues」といった伝統的なブルース・ナンバーのカバーも披露されており、Sonny自身がbluesのルーツへと立ち返ろうとしている姿勢が明確に伝わってくる。単なる「回顧」ではなく、今の自分の表現としてのbluesがここにある。
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