ロシア人の名前のしくみ
ロシア人の名前は、「名・父称・姓」によって構成されます。
たとえば、ロシアの文学者の名前を挙げると。。。
- ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・ゴーゴリ
- フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
- レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ
- イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ
- アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
このように最初が「名」、次に「父称」、最後に「姓」という形で成り立っています。
以下、一つずつその特徴を見ていきましょう。
名(個人名)
最初に来る「名」は、誕生時に親から与えられる個人名で、いわゆるfirst nameです。
文学作品でもよく登場し、現在でもよく使われる代表的な名前をいくつか掲げてみましょう。
男性名
・アレクサンドル
・マクシム
・ドミートリイ
・アレクセイ
・グリゴリー
・ウラジーミル
・ワシーリー
女性名
・ソーニャ
・アリョーナ
・ナターリャ
・アレクサンドラ
・アグラフィーナ
・エカチェリーナ
愛称
名前には、それぞれ親しみを込めた愛称が存在し、日常生活で頻繁に使用されます。名前を短縮したり、変化させたりしたものが用いられます。これらは、家族や友人、同僚など親しい間柄で使用され、時には初対面でも用いられることがあります。
愛称は、親しさの度合いや場面によって、基本的な形からさらに親しみを込めた形に変化することもあります。いくつか例を挙げてみましょう。
- アレクサンドル → サーシャ → サーシェンカ
- ドミートリイ → ジーマ → ジーモチカ
- エカチェリーナ → カーチャ → カーチェンカ
*右の方がより親しさが増しています。
父称
2番目(中央)に来る「父称」は、ロシア文化(スラブ語圏)に特有のもので、自分の父親の「名」を継承します。
父称は、父親の「名」をそのまま用いるのではなく、その語尾を変化させたものを使います。この語尾変化には、男性形と女性形があり、性別によって異なります。
- 男性形:父親の名 + 「-ович」や「-евич」など
- 女性形:父親の名 + 「-овна」や「-евна」など
父称は正式な場で使われます。相手を敬称で呼ぶ場合は、「名 + 父称」の形が用いられます。
名 | 父称(男性形) | 父称(女性形) |
ニコライ | ニコラエヴィチ | ニコラエヴナ |
フョードル | フョードロヴィチ | フョードロヴナ |
レフ | レヴォーヴィチ | レヴォーヴナ |
イワン | イワーノヴィチ | イワーノヴナ |
アントン | アントノヴィチ | アントノヴナ |
ヴァシリイ | ヴァシーリエヴィチ | ヴァシーリエヴナ |
ミハイル | ミハイロヴィチ | ミハイロヴナ |
ドミートリイ | ドミートリエヴィチ | ドミートリエヴナ |
姓
最後に来るものは「姓」です。
姓も父称と同じく男性形・女性形があり、男性は男性形、女性は女性形を名のります。したがって、同じ家族内でも姓の呼び方が男性と女性で異なります。
男性形・女性形は、姓の語尾を変化させることで作られます。
- 男性形:原形
- 女性形:語尾に「-а」や「-ая」などを加える
男性形 | 女性形 |
ドストエフスキー | ドストエフスカヤ |
トルストイ | トロスタヤ |
ツルゲーネフ | ツルゲーネヴァ |
チェーホフ | チェーホヴァ |
イワノフ | イワノワ |
*外国語由来の姓は変化しません。たとえば、ゴーゴリ(ウクライナ系)は、男女同形です。
ロシア文学を読むために
ロシア文学を読む際には、登場人物の名前がさまざまな形で表現されることがあります。同一人物が正式名、父称付き、愛称などで呼ばれるため、混乱することがあるかもしれません。しかし、これらの名前の構成や使用法を理解することで、作品の登場人物の関係性や背景がより把握しやすくなるでしょう。
ロシア人の名前の仕組みを理解することは、ロシア文学をより豊かに楽しむための一助となります。ぜひ、これらの知識を活用して、ロシア文学の世界に深く入り込んでみてください。
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