Banjo

【Roots Music】The History of Banjo – バンジョーの歴史

Banjo

Banjo – 実はアフリカ由来の楽器

 The banjo is frequently associated with country, folk, Irish traditional, and bluegrass music. Historically, the banjo occupied a central place in African American traditional music, before becoming popular in the minstrel shows of the 19th century.
 The banjo, with the fiddle, is a mainstay of American old-time music. It is also very frequently used in Traditional (“Trad”) Jazz.

Banjo – Wikipedia

 Banjoといえば、bluegrassやcountry musicの楽器という印象が強い。というか、それしか印象がない。
 なので、もともとヨーロッパ系の移民が持ち込んだ弦楽器が起源で、それがアメリカでbanjoという形に発展したのだと思っていた。

 ところが、調べてみると意外なことに、アフリカ系アメリカ人がアフリカの伝統楽器をもとに作り上げたのが最初らしい。
 もととなった楽器のひとつと言われているのが、セネガルの「Akonting」という楽器で、見た目は、もうbanjoそっくりだ。
 これ↓

Akonting

(Olivier EpronOlivierkeita – 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3542921)

(出典: Wikipedia

 アメリカでは、countryは白人の音楽、bluesは黒人の音楽という色分けが1960年代ごろまで根強く残っていたが、実際の歴史を紐解いてみれば、人種、文化、言葉の壁を越えた影響というのは、早くから始まっていた、ということみたいだ。

Minstrel ShowとBanjo

 もともとbanjoという楽器がcountryで使われるようになったきっかけは、Minstrel Showだったらしい。Minstrel Showは、現在では人種差別の負の歴史として語られることが多い。白人が顔に墨を塗り、黒人に扮して、誇張、戯画化された黒人像を演じた大衆娯楽だ。1840年代から60年代にかけてアメリカ全土で一大流行した。

 この演劇の中で、黒人の音楽も真似され、演奏されたが、その中で使われていた楽器のひとつがbanjoだった。Minstrel Show自体は20世紀にはいると下火になっていったが、Minstrel Showでbanjoを習得した白人演奏家たちが、country musicの演奏にもbanjoを用いるようになる。一体どの時期辺りから、countryにbanjoが用いられるようになったのかははっきりしないが、極めて早い時期だったように思われる。Countryは、もともとfiddle(violin)を中心に演奏していた音楽であるから、banjoの音色は非常に親和性が高かったのだろう。

 Minstrel Showは差別的な嘲笑が多分に含まれた演劇で、今では批判的に言及されることがほとんどだ。特に顔を黒く塗るblack faceは、アメリカではタブー視されている。
 確かにこのshowは、人種差別観を露骨に表現したものだが、Minstrel Showがアメリカの音楽史に与えた影響は計り知れない。Minstrel songの中でも、「Oh! Susanna」や「Camptown Races」は今でも有名だ。Minstrel Showは、多様な人種の多様な文化からさまざまな音楽的要素を自在に取り込んで、高い娯楽性を持つ大衆音楽に仕立て上げた。

 歴史には常に多面的な側面があり、評価は一つの価値観からだけ決められるものではない。Minstrel Showは、人種差別的として非難される一方、多様な音楽的要素を融合した文化として再評価する向きもある。人種差別的であると同時に人種融合的な面も持っているということだ。

 純粋に白人の音楽と見られているcountry musicにも、その歴史をたどれば、黒人音楽からのさまざまな影響があるというのは、とても興味深い事実ではないだろうか。