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千言万句

  • 2019年5月23日

井伏鱒二 短編作品 その2

『追剥の話』  とある村の寄り合い所(共同作業場)。敗戦から2、3ヶ月が過ぎて追剥や強盗が増えてきたというので、各集落で集まって対策を練っている。「盗難対策提案緊急会議」と戦時さながらな大仰な名前が付けられている。  集まった人たちは部落会長の指名で一人ずつ所見を述べていく。話している本人たちはいた […]

  • 2019年5月22日

井伏鱒二『集金旅行』(1935)

「しかし、それはお止しになったらどうです。あなたが是非とも行くと仰有るなら僕は妨害しませんが、それとこれとは問題の性質がちがいます。こちらは岩国の町だけではない、福岡にも、尾道という町にも、岡山にも神戸にも、岐阜にも寄ることになっています。時機を改めてお出かけになったらどうでしょう」 彼女は寧ろとり […]

  • 2019年5月21日

井伏鱒二 短編作品

 飄々として、軽妙な人物像。淡々として、起伏のない情景描写。 何が面白いのか、と言われれば、説明に困るような作品。。。それが井伏鱒二の短編に感じることだ。 しかし、文章は平易かつ的確で、目の前にありありと情景が浮かんでくる。この描写の巧みさが、この作家の魅力なのだろう。  井伏鱒二は、早稲田文学部に […]

  • 2019年5月20日

井伏鱒二『屋根の上のサワン』(1929)

 わたしは足音を忍ばせながら傷ついたがんに近づいて、それを両手に拾いあげました。そこで、この一羽の渡り鳥の羽毛や体の温かみはわたしの両手に伝わり、この鳥の意外に重たい目方は、そのときのわたしの思い屈した心を慰めてくれました。わたしはどうしてもこの鳥を丈夫にしてやろうと決心して、それを両手に抱えて家へ […]

  • 2019年5月20日

井伏鱒二『山椒魚』(1929)

度重なる改稿  初出は『幽閉』という題で、1923年(大正12年)に早稲田の同人誌に発表されたもの。その後、大幅に改稿されて、1929年(昭和4年)、『山椒魚』という題で再発表された。  現在、一般的に読まれているものは、この昭和4年発表時のもののようだが、この作品は、その後、度々著者によって改筆が […]

  • 2019年2月7日

カフカ『アメリカ』(1927)

『アメリカ』という題名  この作品は、カフカの親友マックス・ブロートによってカフカの遺稿が編纂され、1927年に『アメリカ』という題で出版された。 現在では、『失踪者』という題で出版されているが、どうも自分には、この『アメリカ』という当初の題に愛着がある。  残された手記から、カフカがこの小説を『失 […]

  • 2019年2月5日

カフカ『審判』(1925)

「日常」という目に見えない負担  Kにとって訴訟とは何だったのか。 この訴訟には、終わりも見えなければ、進展も見えない。それでいて、生きている以上、ずっとつきまとって離れないものだ。ただ重い負担となって、ずっとKにのしかかっている。  Kの生活は、訴訟を中心にして回っている。すでに「日常」の一部とな […]

  • 2019年1月18日

カフカ短編小説 その2

『皇帝の使者』  死の床にある皇帝が、一介の市民に過ぎないあなた(Du)に宛てて伝言を送る。だが、その伝言を預かった使者は、懸命に駆け続けているにもかかわらず、決してあなたにたどり着くことはない。何千年もの間。。。 それでもあなたは、皇帝の伝言(Botschaft)を待ち続けている。  例によって、 […]

  • 2019年1月18日

カフカ短編小説

 カフカは、未発表や未完成作品を含めて、数多くの短編を残した。カフカの短編小説の多くは、寓話(parable)と呼ぶべきものであって、話の筋や流れ自体にほとんど意味がない。そのため、その話が何を物語っているのか、いろいろと解釈する必要がある。  実存主義、ユダヤ教、20世紀初頭のプラハ、病と孤独、複 […]

  • 2018年1月15日

水村美苗『日本語が亡びるとき』(2008)

消えていく言語  一説では、現在世界に5000から8000の言語が存在しているといわれる。数え方にもよるが、少なくとも3000近くあると見るのが一般的らしい。 世界には多種多様な言語が存在しているが、それと同時に消滅の危機に瀕している言語も数多く存在している。その数はユネスコの発表によれば、2009 […]